8月28日、東京・星稜会館で、「共同テーブル」が主催するキックオフシンポジウム「いのちの安全保障を考える」が開かれた。冒頭、発起人代表の佐高信さん(写真下)が20分にわたって「会の趣旨」を述べた。「ひどい政治が続いているが、肝心の野党の顔を見えない。野党にはっきり目鼻立ちをつける運動が必要だ」と強調する佐高さん。具体例としてオリンピック問題にしっかり反対できない野党の問題を取り上げた。
「オリンピックに最初から反対した野党はなかった。オリンピックにどう立ち向かうかは大事な問題。やってよかったという風潮があるが、やっぱりおかしいと言い続ける野党がないとだめだ。私は最近、ある集会で『オリンピックを止められないなら戦争も止められないんじゃないか?』と発言したら、参加者からドキッとした、と言われた。でもこれが私の実感だ。いまこそ、非正規社会からの脱却、そして戦争にしっかり反対できる野党が必要だ」と熱弁した。
シンポジウムのテーマは「憲法・非正規社会・原発・安保と平和」で、4人のパネリストは各分野で活躍している人たちだった。植野妙実子さん(アフガン問題)、竹信三恵子さん(非正規問題)、山城博治さん(沖縄基地問題)、神田香織さん(フクシマ問題)がそれぞれ7分の持ち時間のなかで、本質に迫る鋭い発言が行った。
沖縄の山城博治さんはこの日のためにわざわざ上京した。「先島諸島では軍事基地建設がどんどん進んでいる。中国脅威論が使われている。とても危険な状況だ。このことを訴えたくて来た」と。沖縄問題は、オンラインで元山仁士郎さん・金城実さんも発言した。「しっかり戦争に反対する」ことの大切さ。このことが「共同テーブル」の大きなテーマであることを、佐高発言と併せて実感させられた。
続けて、シンポジウムでリモートで発言したのは、三浦まり、太田あゆみ、西谷文和、前田朗、安積遊歩、伊藤誠、杉浦ひとみの各氏だった。それぞれ印象に残る発言だった。西谷さんは、イラク戦争以降、戦争加担をつづけてきた日本だが、次の米国の戦争では実戦参加を要請されるのではないか、と危惧を述べた。
連帯あいさつでは、福島みずほさん(社会民主党党首)・岡﨑宏美さん(新社会党委員長)・漢人あき子さん(緑の党運営委員・東京都議会議員)が揃って登壇した。新社会党は、小選挙区制度に反対して1996年に社民党から独立して結成された党で、両党の間には葛藤があった。しかし「ひどい政治」をなんとかしようという思いは同じで、25年を経て、社民党党首と新社会党委員長が肩を並べることになった。これは「共同テーブル」が産んだ成果といえるだろう。登壇した三党の代表は全員女性で、今の時代を象徴していた。
2時間半に及んだ集会の最後は、「共同テーブル」づくりを始めた「共生連帯・近畿」からのオンライン報告。ここで「人新世の『資本論』」の著者・斎藤幸平さんが「共同テーブル」(関西)の呼びかけ人を引き受けてくれた、との報告があり、盛り上がった。
閉会挨拶で、司会の白石孝さんは「韓国のリベラル政党は、下からの現場の運動が基盤になってつくられてきた。そこにも学びながら共同テーブルの輪を広げていきたい」と抱負を述べた。
8.28シンポジウムはコロナ感染拡大もあり、急遽「無観客」開催になったが、それを知らずに来た人も多く、結局リアルで約100人が参加した。またオンライン配信では約300人が視聴し、その後も視聴数が伸びている。「共同テーブル」への注目が高まっていることが感じられた。(M)